酩酊夜咄

たぶんこれはエッセイ

シンプルライフ~私と男とストロングゼロ~

2年前の絶賛病み時代に書いた、エッセイ的な書き物。

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私はプライベートの大半を、ほぼ家のベッドで寝転んで過ごす。たまに起き上がっては『氷結ストロングゼロ』を飲む。アルコール度数9%、人工的なフルーツ味の缶酎ハイだ。手っ取り早く酔うにはこれが一番。酔っ払ったらベッドにダイブして寝る。仕事、食事、睡眠、ストロングゼロ。私の生活にはこれだけしかない。彼氏はもう長い間いない。

 

部屋の隅には、ストロングゼロの空き缶でいっぱいのゴミ袋が無造作に置かれている。仕事でヘマをした時、誰かに嫌なことを言われた時、これを一気に喉に流し込む。そうすると頭がふわふわしてきて、今日のクソみたいな出来事も、カスみたいな奴の顔も薄らいでいく。

 

思えばこの数年、記憶に残るような嬉しいことも、悲しいこともない。あったのかもしれないけど覚えてない。

 しかし記憶はなくとも時間は過ぎる。このまま何もなく年だけ取るわけにはいかない……。

 

私は思い立った。

「恋をするしかない」と。

恋をして、この堕落スパイラルから抜け出そう。

 

さっそくとある婚活アプリに登録した。そこで知り合った数人の男性とデートすることになった。

私はこのために買った男ウケしそうな服を着て、愛想よく行儀よく振舞った。

どの男性も優しく、私を丁寧に扱ってくれる。 「また会いたい」と言ってくれた人もいた。

 

だけど、デートする度に心が疲弊した。“ちゃんとした私”でいるのが辛いのだ。

家に帰ってよれよれのジャージに着替えて、床にうんこ座りしてストロングゼロを飲むと心底ほっとした。自分を取り戻している気がした。

 

結局、特に成果もなく一ヶ月ほどでアプリから退会した。

「運命の出会い」なんてものはもう諦めて、家で好きなだけぐうたらしていよう。

 

私は今日もベッドに横たわる。そしてストロングゼロを飲む。

 

「いつか本気で好きになれる人と出会ったら、きっと“この人ために変わりたい”と思えるはず……」

 

酔っぱらいの脳味噌で、そんな都合のいいことを考えている。